妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群
妊娠中の健康管理はお母さんの誰もが気になる事ですね。女性が妊娠すると、予期していなかった様々な症状が現れるようになります。自分の体の変化に一喜一憂していると、10ヶ月もの妊娠期間が精神疲労で苦痛になり兼ねませんし、お母さんの心の動揺は赤ちゃんにも影響しますので、予備知識を身につけて、妊娠生活を楽しむようにしましょう。
妊娠高血圧症候群は、一昔前までは妊娠中毒症と呼ばれていました。いずれも、同時にいくつかの症状が発生して、悪化するとお母さんだけでなく、お腹の赤ちゃんの発育にも大きな影響を及ぼすといった危険を伴いますので、日頃から血圧の値が高かった女性が妊娠している場合は、特に注意が必要です。
チェックポイントとしては、妊娠中期(20周目を超えてから)に下記のような症状が二つ以上現れている場合は迷わず担当の医師の指示を仰ぎましょう。
- 血圧が高い
- 蛋白尿になる
- むくみが出はじめる
- 急激に体重増加(一週間に500g以上)する
では、何が原因でそうなるのか、どうすれば、防げるのかといった事について説明します。
実のところ、現代の医学でも明確な原因はまだ特定出来ていないのですが、今(2016年9月現在)では、『胎盤をとりまく血管が正常でなくなる事がきっかけとなって妊娠高血圧症候群を引き起こす』というのが有力な説のようです。
妊娠すると、女性の体の中では、生理の際に破れて出血するその大元になっている子宮の血管(螺旋動脈)を、妊娠15周目頃までに作り変えます。これは、お腹の胎児にたくさんの血液が送られるようにする為の、いわば血管の大工事なのです。
妊娠高血圧症候群というのは、この血管の工事が上手くいかなかった状態に起こる可能性が高いのです。その工事が不完全だと、胎盤で育っている赤ちゃんにお母さんの体の中の酸素や栄養をスムーズに受け渡す事が出来なくなって、やがて赤ちゃんの発育が悪くなっていきます。すると、お母さんの体は、自然と、赤ちゃんに必要な酸素や栄養を送らなくてはと、一気に無理な量を送ろうとしてしまい、血管に負荷が掛かり過ぎて高血圧になってしまうという訳です。
予防についてですが、前記の通り発症の原因が特定出来ていない為に、その予防も、残念ながらこれといった明確なものはありません。俗に、暴飲暴食したり塩分を摂り過ぎる食生活をしていたら妊娠高血圧症候群になりやすくなると言われていますが、その反面、極端なカロリー制限をしたり、塩分カットをし過ぎる事も危険であるという報告もあります。(日本産婦人科学会の「妊娠高血圧症候群の生活指導および栄養指導(1997年制定)」によれば一日当たり10g以下の塩分摂取制限を推奨しています。)
血圧は正常か?
ですので、もし血圧計を持っているのであれば、定期的に測定・記録をしながら、まずは高血圧になっていないかを確認するようにして下さい。最近では薬局やスーパーにお試し用の血圧計を置いてある場合も多いですので、お店に行ったついでに測るようにしてみるのも良いかもしれません。
蛋白尿は出てないか?
蛋白尿が出ているか否かは、病院で尿検査をすればわかります。尿に蛋白が多く含まれたときは、何が原因なのかについては、担当の医師とよく話してみて下さい。
むくみはないか?
むくみは血液の循環と深く関わる症状です。体のどこかが異常になる事で、静脈やリンパ管の流れがスムーズにいかなくなり、本来戻ってくるべき水分があちこちに溜まってしまう状態がむくみですので、子宮の血管の異常からも現れるのです。ただ、立ち仕事や、運動不足による血の巡りの悪さや、肝臓の疲れからもむくみは出ますので、むくみ=妊娠高血圧症候群とは考えないようにして下さい。
肥満になっていないか?
急激な体重増加が見られるのであれば、ストレスによる食べ過ぎが原因で肥満化している場合があります。1日に必要なエネルギーを越えても完食したり、更に運動をしていないようであれば、それは肥満に一直線です。運動不足は新陳代謝が低下してむくみにも繋がっていきます。塩分の取りすぎや、糖分の大量摂取を避けて、出来るだけ栄養バランスを考えた食事で、日頃より野菜類を多く取るように心がけて下さい。
妊娠高血圧症候群かな?と心配になったら、担当の医師や専門の医療関係者などに相談して対応してもらい、また予防法についても、自分の状態に合ったアドバイスを聞くのが最良だと言えます。万が一妊娠高血圧症候群で、それも重症の場合は、子宮や胎盤での血液の流れが悪くなりますので、赤ちゃんはお母さんから十分な酸素や栄養をもらえないで、発育不全になってしまう事もあり、結果的に低出生体重児(普通よりも体重の少ない赤ちゃん)として生まれることもあります。血液の流れがさらに悪くなれば赤ちゃんは酸素不足に陥り、胎児の心拍にも影響を起こしかねませんので、出産時に胎児の心拍に異常が出れば、急遽帝王切開になることもあります。いずれにしても、症状が悪化する前に定期的に検診を受けていれば必要以上に心配する必要はありません。暴飲暴食を避け、規則正しい生活を心掛けて、億劫がらずに日々の体重をチェックするようにしてみてください。一週間で500g以上増えるようであれば、早急に食事の見直しを始めましょう。