カンガルーケアの効果を知る

カンガルーケア

カンガルーケア


カンガルーケア

ジャングルでゴリラに救われてそのままゴリラの子供として成長し、やがて森を守るリーダーとなっていく、、映画ターザンのお話は有名ですね。物語はとても興味深いですが、あくまでも作り話であって実話ではありません。しかしながら、一方で本当にジャングルで動物に育てられた人間が存在する事も知られています。地球上の哺乳類は、お母さんのお腹で育ってお産を経て誕生します。生まれたての赤ちゃんにとって、始めて見る光の中で自分を守ってくれる生き物の存在はとても重要ですので、その赤ちゃんは、傍で自分のお世話をしてくれるその存在を自分の親であると信じる傾向があります。そういう訳もあって、森の中で狼の群れと一緒に育った人間の子供が発見される事があってもおかしくはないのです。

カンガルーケアの由来

カンガルーケアは1979年頃に南米コロンビアのボゴタで始まったものです。その頃、保育器の不足から、未熟児の70%が感染症や呼吸器の問題で亡くなりました。そんな中、試しに母親が素肌のまま赤ちゃんを、あたかもカンガルーのお腹にある袋にいるように1日24時間ずっと懐に抱いて過ごしたところ、そこで生まれた未熟児の死亡率が下がった事例から、カンガルーケアの効果が世界中に広まっていきました。

カンガルーケアのメリット

日本での出産において、一昔前までは、産声をあげた赤ちゃんは、すぐに産湯に浸からせて、その後は新生児室へ連れられていきました。そしてしばらく時間が経った後でお母さんの元へ連れてこられてご対面…というのが一般的でした。ですので、赤ちゃんは、お母さんのぬくもりを肌で感じておっぱいを吸うその前に、人口のミルクや砂糖水などを与えられてしまっている場合が多々ありました。

最近では、生後すぐの赤ちゃんをお母さんの元へ連れていき素肌で赤ちゃんを抱き、母子の絆を感じる事が出来る“カンガルーケア”が推奨されています。もちろん、自分で呼吸するのも困難な赤ちゃんでは無理ですが、赤ちゃんの体温や呼吸が安定していて、担当医師の承諾があれば出来る場合が多いですが、もしカンガルーケアを出来るか不安であれば、出産前に病院に確認しておいてもよいでしょう。

では、実際にカンガルーケアをする場合ですが、一般的なアメリカの病院の場合、生まれた赤ちゃんは、羊水を拭き取った後、すぐにお母さんの元に連れてこられ、お母さんの胸元にうつ伏せに寝かせてブランケットをかけます。肌と肌(Skin to skin contact)で赤ちゃんを抱き、1~2時間出産した病室で過ごします。お母さんは、おっぱいを与えながら、赤ちゃんと触れ合う事で、母親になった自覚を全身で感じる事が出来ます。赤ちゃんは、お母さんに抱かれることで、体温や呼吸、血糖などが安定し、お母さんの正常細菌が赤ちゃんに移ることで、雑菌に対する皮膚バリアの形成が促されます。カンガルーケアをしている赤ちゃんは泣くことが少ないので、無駄に酸素とエネルギーを消費するのを抑えてくれます。赤ちゃんはお母さんの胸にくっついて寝ながら、お母さんの心臓の鼓動、呼吸、体温、匂いなどを感じ、まるでお母さんのお腹(子宮)の中にいるように感じて安心しますし、お母さんにとっても、母乳生産のためのホルモンが分泌される原動力になるので、次第に母乳の量が増えて、子育てそのものにも自信が持てるようになります。

このカンガルーケアは、お母さんだけでなくお父さんも有効です。お母さんが帝王切開後ですぐにカンガルーケアが出来ない場合や、自宅に戻ってからでも行えますので、ぜひお父さんもやってみてください。赤ちゃんが泣いているときにカンガルーケアを行うと、赤ちゃんが泣き止み、とても落ち着き安心する様子が見られます。

カンガルーケアのデメリットと注意すべきこと

赤ちゃんにとっても、お母さんにとってもメリットが多いカンガルーケアですが、デメリットがある事も忘れてはいけません。新生児はガラス細工のようにとても繊細で、一歩間違って落下させたりでもすれば、命の危険に晒されかねません。また、手に取るお母さんの方は、出産という大仕事を終えたばかりで、お母さんによっては、放心状態のままかもしれません。そうでなくとも、ベッドに連れてこられて、「はい、これが貴女の赤ちゃんですよ。」と突然渡されても、どこを持てばいいのやら、また、持って何をすればいいのやら、、不安にかられて悩んでしまうお母さんもいると耳にします。ですので、カンガルーケアを強く希望するのであれば、赤ちゃんをどのように扱うのかを、前もって病院で教わっておいた方が良いでしょう。また、カンガルーケアをする時は、決してお母さん一人にならないで、パートナーや周りの人達にもよく理解してもらって、彼らがいつでもフォロー出来るような体制を整えておくようにして下さいね。

参考文献:

http://www.kangaroocareusa.org/education.html

http://midwiferytoday.com/articles/kangaroocare.asp

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執筆者について

Junko@momijimom

日本正看護師免許
ハワイ州正看護師免許
カリフォルニア州正看護師免許
ラマーズ公認チャイルドバース・エデュケーター
ラクテーション・エデュケーター/カウンセラー