母乳は赤ちゃんにとって最高の栄養

母乳


母乳

お母さんと赤ちゃんの絆を強めてくれる大切な授乳の時間。

生まれたての赤ちゃんは、ミルクを飲んでいる時間以外は寝ていることが多いので、授乳中はお母さんと赤ちゃんの大切なふれあいの時間となります。今回は、その授乳の基礎知識と母乳と粉ミルク(以後”ミルク”と記します)の違いについて書きたいと思います。

生まれたばかりの赤ちゃんに最も必要な栄養は、お母さんが与える母乳です。母乳には赤ちゃんが必要とするすべての栄養はもちろん、赤ちゃんを細菌やウイルスから守る免疫成分も含まれていて、赤ちゃんの小さな命を守ってくれます。
赤ちゃんは、母乳を飲んでいる間、お母さんの腕に抱かれ、その体温の温もりを強く感じています。そしておっぱいを吸うことを通じて、お母さんへの絶対的な信頼を強めていきます。一方のお母さんも、赤ちゃんへの愛情を募らせ、母親としての自覚をより確固なものにしていきます。授乳は、赤ちゃんとお母さんが肌で触れ合い、絆を深め合う大切なひと時なのです。

母乳の成分について
母乳には、身体の組織を作り成長させる上質なたんぱく質、エネルギー源となる適切な種類の脂肪、脂肪の消化を助けるリパーゼという酵素や、脳や中枢神経の成長にかかせないコレステロールやラクトース(糖分)、ビタミン、ミネラル、鉄分など、赤ちゃんが必要とする栄養をすべて含んでいます。赤ちゃんの消化器官の働きは未熟ですが、母乳は未熟な消化機能でも消化吸収しやすいようにできています。
出産後2~5日の間に出る母乳を「初乳」と呼んでいます。初乳の中には白血球や免疫グロブリンが沢山含まれており、赤ちゃんを外界のウイルスや細菌などから半年近くも守ってくれ、まだ防御システムの整っていない赤ちゃんの腸を保護してアレルギーになりにくくしてくれます。また、初乳には胎便を促す働きもあり、消化器からビリルビンを排出することによって新生児黄疸を防ぐこともできるのです。

母乳は、初乳の後、→移行乳→成乳と、成長していく赤ちゃんのニーズに合わせて成分が変化していきます。免疫物質の多かった初乳から、脂肪と糖分の多い移行乳、そして栄養豊富な成乳へと変化し、ビタミンやミネラルの量も成長に応じて変化していきます。また一回の授乳の間にも母乳の内容は変化します。最初に出る母乳は「前乳」といって、低脂肪の水分の多い母乳で、のどの渇きを潤してくれます。飲み続けるうちに、だんだん脂肪の多い母乳「後乳」へと変わっていきます。赤ちゃんがのどが渇いているだけの時なら数分飲んで満足だったりしますし、お腹が空いていればしっかり脂肪の多い後乳まで飲む事でしょう。

母乳のメリットとデメリット
母乳育児は、お母さんと赤ちゃんの絆を深めるだけではありません。お母さんにとっては、乳がんや子宮がんになりにくい、マタニティーブルーになりにくい、子宮収縮を促し産後の回復を助ける、無理なくダイエットできる、コスト(ミルク代)がかからない、外出時に荷物が少なくて済む…といったメリットがあります。赤ちゃんにとっては、肥満や糖尿病、喘息などの病気になりにくい、突然死の危険が予防できる、脳やあごの発達を促すなど多くのメリットがあります。

ただ、母乳にはビタミンKが多く含まれていない為、母乳だけでは赤ちゃんのビタミンKが不足しやすくなることもあります。ビタミンKは血液を凝固させるときに必要なビタミンなので、不足すると出血し易くなったり、出血すると止まりにくくもなります。成長途中の赤ちゃんのうちは、自分の体の中でこの成分を作ることが難しいのです。特に「ビタミンK欠乏症」になってしまうと、頭蓋内出血を起こす危険があり、最悪の場合、赤ちゃんの生命も危ぶまれますので、出産後すぐに注射かシロップで補うことが必要となります。母乳を与えているお母さんは、出来るだけビタミンKが多く含まれている緑黄色野菜や納豆、海藻類などを食べるようにしましょう。
また、母乳育児をするお母さん側にとっては、お酒を自由に飲めない、食事に気を遣う、時として赤ちゃんを預けるのが難しい、乳房のトラブルが起きることがある、外出先での授乳に気を配る必要がある、授乳間隔が短くて忙しい、などといったデメリットが生じることもあります。また、赤ちゃんがどのくらい飲んだかわからず不安を抱える場合もあります。

ミルクのメリットとデメリット

ミルク(フオーミュラ)は、主に牛乳が原料のものと大豆などからできているものがあります。現在のミルクはかなり母乳に近い成分が含まれるように調整されているものが多く、母乳ではなくミルクで育てたいお母さんや、母乳とミルクの混合で育てたいお母さんにも安心して赤ちゃんに飲ませてあげられるようになっています。それぞれのミルクによって成分の差はありますが、DHA やオリゴ糖、ラクトフエリン、カロチン、ビタミン類(ビタミンA,B,C,D,E,Kなど沢山のビタミン類)を含んでいます。とはいえ、入っているたんぱく質の種類が違うことから、消化吸収に時間がかかったり、アレルギーを起こしやすくする場合があります。脳の成長を促すコレステロールは粉ミルクにはわずかしか入っていませんが、母乳はラクトース(糖分)で補っており、味もミルクに比べて甘くて新鮮に感じます。ミルクの甘みは別の成分からきていますので、ラクトースと比べると、ミルクは人工的な甘さに感じるのかもしれません。また、ミルクだけで育った赤ちゃんは将来的には肥満のリスクが母乳よりも上がるという報告もあります。

ミルクは成長によって種類(成分の内容)が違いますし、日本製とアメリカ製でも多少の違いがあります。どちらにしても、新生児の頃は、成長の時期に合わせてミルクを変えていくようにしましょう。

では、ほとんど母乳と変わらない栄養価を含んだミルクですが、どうしても摂取する事が難しいものがあります。それは、初乳に多く含まれる免疫物質(赤ちゃんを感染から守ってくれる成分)です。(もしも母乳をあげる場合でも、直接おっぱいから飲ませた場合と、母乳を冷凍したものを解凍した場合では、この免疫物質の量は変わってしまうので、直接飲ませるのがベストと言えます。)この免疫物質が含まれていないミルクだけで育てると、細菌やウイルスに侵される危険性が母乳の赤ちゃんよりは高くなります。しかしながら、ミルクで育ったから病気になりやすいという訳ではありませんので、その部分に必要以上に神経質になる事はありません。また、お母さんが健康である限り、誰でも母乳は出てきます。出産直後で、どうしても直接おっぱいから飲ませるのが難しいような場合は、手で絞ってスプーンなどで与えても構いません。小さじ1つ分の母乳も赤ちゃんにとってはとても貴重な栄養源になるのですから。そうやって、少しでも免疫物質のある母乳を飲ませてあげられたら、お母さんは「まずは母乳育児が出来た」と一つ自信を持ってください。

ミルクの場合、哺乳瓶を洗ったり消毒する手間がかかりますし、買いに行く手間やコストもかかります。外出時の荷物が多くなったり、赤ちゃんが欲しがってもすぐに上げることが難しい場合もあります。ただし、アメリカにはすぐに飲める出来上がっているミルクも多く売られていますので、またコストは少し高くなりますが、たまに(特に外出先で)はそういったものを利用するのも良いでしょう。

もしも母乳を与えたいけれど上手く出来ていない時や、授乳自体がストレスになってしまっているお母さんなどは、あきらめる前に一度、母乳育児を勧めている小児科医か母乳育児の専門家に相談してみてください。

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執筆者について

Junko@momijimom

日本正看護師免許
ハワイ州正看護師免許
カリフォルニア州正看護師免許
ラマーズ公認チャイルドバース・エデュケーター
ラクテーション・エデュケーター/カウンセラー