ビタミンK
ビタミンK
ビタミンKとは
脂溶性ビタミンといって、あぶらに溶けるタイプのビタミンの一つです。ビタミンKには、食物に含まれて腸から吸収され肝臓に運ばれるビタミンK1、腸内細菌などの細菌によって作られるビタミンK2などがあります。
ビタミンKは、血液の凝固因子(血液を固めて出血しにくくする)をつくるのに大変重要な働きがあります。抗生物質などで腸内細菌叢が乱れたり、肝臓の病気などでビタミンKが不足することにより出血しやすくなりますが、普通の食事をしている健常人におこることはほとんどありません。
しかし、乳児では特別な病気や薬の投与がなくても、ビタミンKが不足しやすいことがわかっています。
その理由としては…
-胎盤を通りにくく、母体からの移行が少ない。
-腸内細菌がまだ発達していないためビタミンKを作りにくい。
-母乳にはビタミンKが少ない。
などが考えられています。
ビタミンK欠乏性出血症
ビタミンKが不足すると出血しやすくなり、新生児ビタミンK欠乏性出血症や乳児ビタミンK欠乏性出血症と呼ばれる状態になる恐れがあります。
新生児ビタミンK欠乏性出血症は生後2~4日で起こることが多いのですが、母体や新生児の服薬や病気などでビタミンK欠乏症に陥りやすい場合は生後24時間以内に起こることもあります。出血部位は皮膚と消化管が多く、出血のアザ、注射部位からの止血がしにくい、吐血、下血といった症状がみられます。
乳児ビタミンK欠乏性出血症は、生後3週間から2か月までに多く、8割以上に頭蓋内出血(頭の中の出血)がみられ、とても重篤な状態になります。
ビタミンKの投与
新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症を防ぐためビタミンKを新生児、乳児期に投与します。ビタミンKの投与方法は国によって違います。口から飲む経口シロップを使う国もあれば、筋肉注射を使う国、あるいは両方を組み合わせて使う国もあります。一般に経口シロップはその吸収が不安定なので複数回投与する必要があります。
日本ではK2シロップを生まれてすぐ、産婦人科を退院するとき、1か月健診の合計3回、赤ちゃんに投与します。
アメリカでは生まれてすぐに筋肉注射で1回投与します。赤ちゃんへのビタミンK 投与によって赤ちゃんのビタミン欠乏性出血症は80分の1に減らすことができます。私の知る限り、アメリカでも日本でも、通常の病院で出産をすれば、何も言わなくても自動的にビタミンKが赤ちゃんに投与されます。助産院、自然分娩、自宅分娩等を選択した場合は、ビタミンK投与が確実に行われるように気を付けましょう。